<被災地在住の方々へ>
(地震発生時点における提言)
1.いま大切なことは,「必要」と「平等」です.救援物資が届き始めると,自分や家族に少しでも多くの救援物資が欲しいと思われるでしょう.しかし,まずはそれを最も必要としている人に,そして次に,少なくとも平等に分配するようにしてください.
2.自分の欲求を出し過ぎたり,集落内の関係を悪くしたりするような言葉と行動は極力つつしんでください.いま集落内の関係を悪くしてしまうと,復旧・復興段階で集落内の協力関係がうまくいかなくなります.農村・漁村では,集落内の協力関係なしに復興はありえません.
3.区長さんやリーダーを中心にまとまった行動をしてください.区長さんが不在の場合は,至急,副区長の方を区長として昇格させるなど,中心となる人を決め,その人のもとに行動をしてください.
(提言の理由など)
1.この世の中には,誰もが絶対に正しいと認めるような分配の仕方はありません.しかし,こと,震災直後ということに限定して考えれば,「必要原理」と「平等原理」に基づいて考えていく必要があるのではないかと思います.物資等は少なく限度があり,避難所や地域住民にとって十分なものではないでしょう.だからこそ,それを腕っ節の強さでもって強奪するようなやり方はよくありません.おなかがすいているのは,特定の個人だけではなくそこにいる人全員です.平等に分けるということが必要かと思います.しかしながら,特定の物資については,特にそれを必要としている人がいるかもしれません.その場合には,その人にその物資を特にその人に優先的に分けてあげてほしいのです.
2.地震発生後,しばらくするとストレスがたまってきて,ついつい感情的な言葉を発してしまったりするものです.しかし,人に対して面と向かってきつい言葉を発すると,それはその人との関係を悪くしてしまうかもしれません.ふだんは許容の範囲であっても,緊急時には許容の範囲を越えてしまうこともありえます.また,自分や自分の家族のために,少ない物資に対して過度な要求をしたりすると,それは物資の奪い合いのような状態になってしまいます.それでは,それまで培われてきた村のまとまり(協力)が崩壊してしまうことにもなりかねません.農村や漁村では,人々がまとまっていることが重要です.そのようなまとまりをなくしてしまうと,その後,村を復旧・復興させていくことが難しくなります.
実際,中越地震でも,「人間関係が悪くなった」という人々がかなりたくさんあったことを隠さず述べておきましょう.マスコミは「良き日本人像」を放送しようとしますが,それはマスコミが隠しているか取材がいい加減かのどちらかです.あちこちでトラブルは起きていました.事実,調査票調査(アンケート調査)をやっても,地震を経て集落のまとまりが以前よりも良くなったと感じている人は多くありません.トラブルが起こるのがむしろ普通のようです.しかし,トラブルは最小限度にしてもらいたいと思います.非常時おけるトラブルは,感情が高ぶっているときにはマイナスの結果しか生みません.お互いに注意しあって,過度な欲求や不愉快な言動は避けてください.
3.住民を束ねていくために,また,情報を集約して行政に伝えたりするために,区長の役割は重要です.平常時以上に重要になります.仕事量は圧倒的に増えます.体力的にも精神的にもたいへんだと思いますが,区長さんにはがんばってもらいたいと思います.住民間の関係を良好に保つためにも,区長さんのリーダーとしての活躍が必要です.区長さんが病弱だったりする場合には,この際,若手の方で人望のある方を区長にするのもよいかもしれません.それほど非常時の区長の役割は重要です.また,区長さんが行方不明になってしまっていたりする場合には,副区長の方を区長に昇格させるなどして,区長を立ててください.副区長というのと区長というのでは,住民の統括に差が出てくるようです.
<避難所で救援に当たっている方々へ>
(地震発生時点における提言)
1.避難所の名簿はできていますか.最も必要な人は誰かを知るために,公平に物資を分配するために,名簿は作りましょう.もらう,もらえない,もらいすぎる,というのは,避難所の雰囲気を大きく左右します.
2.避難所に避難所以外からも物資をもらいに来る人がいます.何回目の分配でどの人に渡したかを把握するようにしましょう.これも公平性のためです.
3.トイレが確保できないところでは,女性が安心して用を足せる場所を確保してください.また,その場所へ行くときには,女性複数人で行くようにしましょう.
(提言の理由)
1&2.マスコミが隠しているか取材がいい加減かのどちらかですが,避難所ではトラブルがあったり,不満が渦巻いているものです.私が上の1,2を提言するのは,実際に一部に公平分配のルールを犯すような人がいるからです.たとえば,物資を受け取るのに,何度も列に並ぶ人や,夜陰に紛れて他人のものを盗むような人です.あまり過敏になりすぎるのも関係をぎくしゃくさせますが,避難所で救援に当たる人たちができることとしては,名簿を作り,誰に何を分けたかを記録することです.また,避難所に物資が届けられることから,避難所には生活していないが物資だけもらいに来る人もいます.避難所内の名簿を作ることは比較的簡単ですが,外部の人を記録するのはたいへんです.区長さんから名簿を提供してもらうなどすれば,外部の人の名簿を作ることも可能なことだと思います.
これは手間なことですが,「あの人はたくさんもらっている」とか「知らないうちにものがなくなっている」といったことは,避難所や集落の雰囲気を悪くします.残念ながら,少数ではあれ,そういう人たちは一定の割合でいるものだと考えておいた方がよいでしょう.そのような意味でも,名簿を作成することをお薦めしたいと思います.
3.男性は立ちションもありえますが,女性にはそれは酷でしょう.また,夜などは灯りのない中では複数人で連れ立って仮設のトイレに行くようにしましょう.
<地方自治体首長の方々へ>
(地震発生時点における提言)
1.「うちの被害は大きくない」と安易に言わないでください.それは,単に注目されなくなるばかりか,その後の国などからの支援の大きさに関わってきます.
2.特定の地域は,前回の選挙であなたへの投票が少なかったかもしれません.しかし,それでその地域を軽視するようなことをしてはなりません.
(提言の理由など)
1.中越地震の時に山古志村がマスコミに大きく取り上げられた一方で,とある市については,あまり取り上げられませんでした.これは,当時のその市の市長が,ざっと支持基盤に近い集落のみを見て回り「うちは大丈夫」と言ったために,山古志村には多くの物資が行った一方で,その市では物資の量が不足してしまったということもあります.また,当初は,国からの人的・資金的支援も少なくなってしまって,未だにそのことに恨みを持つ住民もいます.市町村長は「くまなく」自分の市町村を見て回ってから被害状況の判断をするようにしてください.
2.実は上の1であげたことのそもそもの理由は,当時の市長が,どうも直前の市長選で,他の候補を推していた集落のことをきちんと視察して回らなかったことにあったようです.市町村長になった以上,支持基盤の住民と同様,必ずしも支持基盤ではなかった住民も平等に接するべきです.好きとか嫌いとかいう問題ではありません.
<在米留学生の方々へ>
(地震発生時点における提言)
1.アメリカ在住の留学生の方で「このままでは資金繰りが危ない」と感じられる方へ.まずは,大学内の身近なオフィスに問い合わせを.阪神大震災で実家が被災 した時,私の留学先の大学院オフィスは3~4クオーター分の授業料減免などをしてくれましたよ.ともかく早めにご相談を.
2.アメリカ在住の大学院留学生の方で「このままでは資金繰りが危ない」と感じられる方へ.焦って早く学位が取れる道を探りたくなる気持ちは分かりますが,一方で「学問に王道はなし」です.私はそれで失敗しました.気分は滅入るけれども,しっかりと歩んでください.応援しています.
