2月8日(日),前日の「卒論発表会」の余韻の冷めやらぬ中,「まつもと市民芸術館」で開かれた,西本智実・ロイヤルチェンバーオーケストラを聴きに出かけた.午後4時開演という早めの設定だったので,午前中に洗濯など日常の仕事をさっさと終わらせるつもりだったが,洗濯が2杯になったりして,結構ぎりぎりになってしまった.いやなパターンである.理想としては,優雅にお茶でも飲んでから出かけるのがよいのだけど.(しかし,いずれにしてもホールまでちゃりんこで行くという,非常に日常的な作業がある.リムジンで乗りつける日がやってくるとはとても思えない.)
席は4千円のC席.いや,ごめんなさい.正直なところとまどいがありました.今までCMで見たことはあるけれども,CDも聴いたことがなかったので,いきなりBとかA席とかいう気にはなれなかったのである.このあたりは,自分も大学教員で一応(音楽ではないが)その道のプロなんだけど,プロっていってもその内実はいろいろあることは知っているわけで,「まあ,まずは小手調べをしてから」という感じだったのである.
演目は,ウェーバーの「オベロン序曲」,ショパンの「ピアノ協奏曲第1番」,ブラームスの「交響曲第4番」だった.「オベロン」はコメントできるほど知らないので置いておく.他の2曲は,いわゆる誰でも知っている曲であり,オーケストラのメンバーとしてもあちこちで演奏している「いつもの曲」だろう.そういうのをあえて2曲も入れてくるのは,ある意味お手軽だが,力量が量られるという意味では怖さもあるのではなかろうか.
コメントする前に,ともかく4階のC席だったので,天井に触れそうなほど近く,音響はいくらよいホールといっても,そこではかなり無理がある,熱が4階に上ってきて,空気はかなり揺らいでいる感じであり,そのあたりは差っ引いて書かねばならないだろう.
ショパンは,やっぱりこの席ではかなりつらかった.音が変な反響をしていて,ピアノが音を外しているのではないかと思うことが何度もあった.おそらくはそうではないのだろうけど.特に速いパッセージで音が団子になるような傾向があったので,これ以上コメントするのは忍びないのでここまでとしたい.
ブラームスは,小編成のオーケストラながら,なかなかよかったと思う.ともかく,指揮者の意図がよくわかる機能的な演奏だった.指揮者というのは振りが個性的で面白い.単に踊っているのではないかというような人から,きちんと1拍1拍丁寧に振る人まであるが,西本さんは後者のタイプであると思う.正直なところ,これまでブラームスという作曲家が今ひとつ好きではなかった――あまり歌えるようなメロディではないし,ところどころで印象的なメロディがあっても数小節くらいの断片みたいなもので,細切れで後が続いていかないようなものが多い.交響曲第1番4楽章の有名なメロディなんかがそうである――のだが,演奏を見て,ブラームスってオケの動きを見ながら聴くものではないかと思うくらい面白いことがわかった.たぶん,スコアを片手に聴くような曲なのである.ブラームスも,よもやレコードやCDといった聴き方(音だけが聴かれる聴き方)がされる時代が来るなどとは思ってもみなかっただろう.主題が返ってきたときに,初回と違って,今回は裏で低音がピチカートをやっているのだとかいう小技を「見て」,「ああ,なかなか面白いじゃないか」となるのだと思った.それがないと,ブラームスはやっぱりつらいと思う.ともあれ,西本さんの指揮は,そのあたりの曲のメカニズムというか構造というかを,きちんと対比的に出していて(しかもこれ見よがしではなく),曲の面白さが伝わってくるよい演奏だと感じられた.
演奏会自体のことでいえば,「おまえら,「ブラボー,ブラボー」ってやかましい!」と思う.最近,吹奏楽の悪影響からか,オーディエンスが自己表現をしすぎるように思う.特に若い人たちに,もう少し控えてほしいと思う.
さて,西本さんは,「女性指揮者」ということが一人歩きしている印象がある.事実,それだからこそ,私も今回は一歩引いてC席で,と思ったのである.しかし,彼女の指揮とそこから出てくる演奏から「女性」であることを感じたかというと,別にそういうことはなかった.男性指揮者であっても,いろいろな指揮をし,いろいろな音楽が聞こえてくる.同じ曲を演奏しても分散がある.私は,西本さんの演奏もその分散の範囲にとどまっているように思えた.男性指揮者が4番を演奏する音楽の分散からすれば,西本さんの演奏も決して有意に外れているとは思えなかった.その意味ではオーソドックスであった.私の感想では,彼女は女性ではあるが,ことさら「女性指揮者」と言い立てる必要もないだろう.もっとも,そのことによって話題性が出て,演奏会に人が来るとかいう宣伝効果があるということはあるかもしれない.しかし,演奏自体は奇をてらったりするようなことはなく,また,「確かに女性だからできる」といった印象を持たせるものではなかったと思う.その意味では安心した.興行主がどういう宣伝をしようともかまわないが,若い演奏家の人たちをみんなで盛り上げていくことには意味も必要性もあると思うので,こういう演奏会はもっとあってよい.西本さんの演奏会に次に行くときには,もう少しよい席で聴いてみようと率直に思える演奏会だった.
それにしても,松本はよいところである.県庁所在地ではないのに,次々とオーケストラがやってくる.ちゃんと調べたわけではないが,結構オケ来訪率は高いのではないかと思う.今回の演奏会も満員であった.文化水準はなかなか高いようである.
席は4千円のC席.いや,ごめんなさい.正直なところとまどいがありました.今までCMで見たことはあるけれども,CDも聴いたことがなかったので,いきなりBとかA席とかいう気にはなれなかったのである.このあたりは,自分も大学教員で一応(音楽ではないが)その道のプロなんだけど,プロっていってもその内実はいろいろあることは知っているわけで,「まあ,まずは小手調べをしてから」という感じだったのである.
演目は,ウェーバーの「オベロン序曲」,ショパンの「ピアノ協奏曲第1番」,ブラームスの「交響曲第4番」だった.「オベロン」はコメントできるほど知らないので置いておく.他の2曲は,いわゆる誰でも知っている曲であり,オーケストラのメンバーとしてもあちこちで演奏している「いつもの曲」だろう.そういうのをあえて2曲も入れてくるのは,ある意味お手軽だが,力量が量られるという意味では怖さもあるのではなかろうか.コメントする前に,ともかく4階のC席だったので,天井に触れそうなほど近く,音響はいくらよいホールといっても,そこではかなり無理がある,熱が4階に上ってきて,空気はかなり揺らいでいる感じであり,そのあたりは差っ引いて書かねばならないだろう.
ショパンは,やっぱりこの席ではかなりつらかった.音が変な反響をしていて,ピアノが音を外しているのではないかと思うことが何度もあった.おそらくはそうではないのだろうけど.特に速いパッセージで音が団子になるような傾向があったので,これ以上コメントするのは忍びないのでここまでとしたい.
ブラームスは,小編成のオーケストラながら,なかなかよかったと思う.ともかく,指揮者の意図がよくわかる機能的な演奏だった.指揮者というのは振りが個性的で面白い.単に踊っているのではないかというような人から,きちんと1拍1拍丁寧に振る人まであるが,西本さんは後者のタイプであると思う.正直なところ,これまでブラームスという作曲家が今ひとつ好きではなかった――あまり歌えるようなメロディではないし,ところどころで印象的なメロディがあっても数小節くらいの断片みたいなもので,細切れで後が続いていかないようなものが多い.交響曲第1番4楽章の有名なメロディなんかがそうである――のだが,演奏を見て,ブラームスってオケの動きを見ながら聴くものではないかと思うくらい面白いことがわかった.たぶん,スコアを片手に聴くような曲なのである.ブラームスも,よもやレコードやCDといった聴き方(音だけが聴かれる聴き方)がされる時代が来るなどとは思ってもみなかっただろう.主題が返ってきたときに,初回と違って,今回は裏で低音がピチカートをやっているのだとかいう小技を「見て」,「ああ,なかなか面白いじゃないか」となるのだと思った.それがないと,ブラームスはやっぱりつらいと思う.ともあれ,西本さんの指揮は,そのあたりの曲のメカニズムというか構造というかを,きちんと対比的に出していて(しかもこれ見よがしではなく),曲の面白さが伝わってくるよい演奏だと感じられた.
演奏会自体のことでいえば,「おまえら,「ブラボー,ブラボー」ってやかましい!」と思う.最近,吹奏楽の悪影響からか,オーディエンスが自己表現をしすぎるように思う.特に若い人たちに,もう少し控えてほしいと思う.
さて,西本さんは,「女性指揮者」ということが一人歩きしている印象がある.事実,それだからこそ,私も今回は一歩引いてC席で,と思ったのである.しかし,彼女の指揮とそこから出てくる演奏から「女性」であることを感じたかというと,別にそういうことはなかった.男性指揮者であっても,いろいろな指揮をし,いろいろな音楽が聞こえてくる.同じ曲を演奏しても分散がある.私は,西本さんの演奏もその分散の範囲にとどまっているように思えた.男性指揮者が4番を演奏する音楽の分散からすれば,西本さんの演奏も決して有意に外れているとは思えなかった.その意味ではオーソドックスであった.私の感想では,彼女は女性ではあるが,ことさら「女性指揮者」と言い立てる必要もないだろう.もっとも,そのことによって話題性が出て,演奏会に人が来るとかいう宣伝効果があるということはあるかもしれない.しかし,演奏自体は奇をてらったりするようなことはなく,また,「確かに女性だからできる」といった印象を持たせるものではなかったと思う.その意味では安心した.興行主がどういう宣伝をしようともかまわないが,若い演奏家の人たちをみんなで盛り上げていくことには意味も必要性もあると思うので,こういう演奏会はもっとあってよい.西本さんの演奏会に次に行くときには,もう少しよい席で聴いてみようと率直に思える演奏会だった.
それにしても,松本はよいところである.県庁所在地ではないのに,次々とオーケストラがやってくる.ちゃんと調べたわけではないが,結構オケ来訪率は高いのではないかと思う.今回の演奏会も満員であった.文化水準はなかなか高いようである.
